ゴーオン

第十一話「なんてったってアイドル」

男は見ていたテレビのチャンネルを変えた。 いきなりけたたましい音楽が流れ、画面では 若い男達が歌いながら踊っている。 今人気のアイドルグループだ。 最近、あちこちの部屋からこの歌が 聞こえてくる。 ぼんやり眺めていると、ふとアイデアが浮かんだ。 …

第十話 パラダイス

一日中、日の差す事がない、うす暗い台所。 じっとり湿った空気は重く沈み、そよとも動かない。 周りを見渡せば、青や黒、灰色の美しいカビ畑だ。 なんて素敵なんだ。まさにここはパラダイスだ。 プールは付いてるし、食事は豪華でたべ放題。 しかもデザート…

第九話 憧れのレオパレス

カメムシ一家と別れてから小一時間。 ブロック塀の際を歩き、側溝の中を歩き 時には道路を飛びながら横断し、 やっとの事でカーマーdeウマに教えてもらった アパートに着いた。 「おー、ここだ、ここだ。レオパレスと書いてある。 きれいなお姉さんがCMに出て…

八話 引っ越し

善は急げだ。さっそく計画を実行するため 街へ引っ越す事にする。 何処へ引っ越すか、二人の意見は一致している。 いつかTVで見た綺麗なお姉さんが住んでいるという アパートに決めていた。 暫く歩いて行くと、後ろから声を掛ける者がいる。 振り返るとカメ…

七話「ヘラクレス」

「これから俺たちは愛される虫になるんだ」 俺はカーナに言った。 「いいか、良く聞け。君は体は小さいが形からしてカブトだ。 ヘラクレスとまでは言わないが、君はカブト虫だ。そして僕はオオクワガタだ」 「へッ」と声にならない声を上げカーナは白目を剥…

第六話 愛される虫

私はカーナに言った。 「いいかい、我々は皆に愛されるアイドル虫になるのだ。 考えてもご覧よ、人間に愛される虫の多い事を、 ちょうちょ、とんぼ、鈴虫、蝉やバッタだって子供達のアイドルさ そして、何と言ってもクワガタとカブト虫だ。 蝶でも無いのに蝶…

五話 愛される虫

私は彼に言った。 「いいかい、我々はアイドルにならなければいけない。 皆に愛される虫にならなければならないんだ。 さもなければ、いつまでも台所の暗がりをコソコソと逃げ回るだけの人生だ」 「ボクは逃げ回らない」 とカーナは言った。 私は彼に言った …

第四話 「蜂起するのだ」

豪からのメールを読み終えたカーナ.ブーンは、 静かに鉄アレイを床に置いた。 吹き出る汗を拭おうともせず、彼は鏡に向かってポーズを取った。 胸の筋肉が大きく盛り上がる。力こぶは、はち切れそうだ。 「時が来た」彼の心は、ナーメンジークの死を知って…

蜂起せよ。

ナーメンジークからのメールを読み終わった俺は一つ大きな溜め息をつき、 すぐに友人のカーナブーンにメールを打った。 「ジークがやられた、我々はすぐに蜂起しなければならない」 打ち終った俺は、ソファーに身を沈め、テキーラを一気にあおった。 「どう…

第ニ話 ナーメンジーク

あー、アンタ!今ワシの事、踏み殺そうとしたやろ! そ、その右手に持っとるモンは何やっ!さてはナメクジコロリやなぁ。 アンタ、蜘蛛の糸を知らんのか?芥川龍之介の名作、蜘蛛の糸や、知らん? しょうも無い人やなぁ、一寸の虫にも五分の魂というやろ。 …

ゴーオン プロローグ

ナーメンジークはぼやいていた。 どうして、カタツムリは家があるだけで人間に好かれるのだ! 童謡にはなるし、でんでん虫なんてカワイイ名で呼ばれよるし。 なにが、ヤリ出せツノ出せ頭だせだ! ワシにもヤリやツノぐらいあるワイ! なのにダ、ワシを見た奴…