第九話 憧れのレオパレス

 

 カメムシ一家と別れてから小一時間。
ブロック塀の際を歩き、側溝の中を歩き
時には道路を飛びながら横断し、
やっとの事でカーマーdeウマに教えてもらった
アパートに着いた。


「おー、ここだ、ここだ。レオパレスと書いてある。
きれいなお姉さんがCMに出ていたアパートだよ。ここ」
アパートを見上げると、異様な雰囲気が立ち上っている。
テレビで見た時と随分イメージが違う。


もっともあの時はフマキラーZを浴びて、目が回っていたから
確信が持てないけど。


「豪クン、ホントにココ?なかなかステキじゃない。
住み易そうだね」
「そ、そう?」
カーナの言葉に救われる思いで、豪は言った。


「じゃー入って見ようか」


ベニヤ合版のドアから礼儀正しく入る。
 僕達のためにドアを誂えてくれるなんて、なんて
心優しい人なんだろー。


それは、単に腐ってただけなのだが。


豪は「きっと良い人だ」と独りごちた。
小さな三和土から板の間に上がると、そこは台所で、
そして、パラダイスだった。