ゴーオン外伝

冤罪

あれから僕は静かに、静かに日々を送っていた。 蚊も蠅も殺さず、ただじっと日々が過ぎるのを見ていた。 或日の事、軽トラックが止まり男が降りて来て庭に薬を撒き始めた。 「いつもの農薬ですね、お疲れさま」と言って、ふと足元を見ると ビオラに付いてい…

恩赦

冷や汗と鼻水と涙で顔中をグシャグシャにしながら 必死にスズメ蜂に言い訳をした。 「故意じゃーないんです、ほんとです−何の悪気もなかったんだ。 ほら、僕ももう年だし忘れっぽいから、すっかり忘れてたんですよー」 「いつも悔い改めて懺悔してルンですー…

天罰

「ここにいた蝶のさなぎを知らないかね」 アシナガが言う。 「知りまへんなー」 「本当に知らないのかね」 「変な言い掛かりを付けないで下さいよ、知りませんよ」 なんで昆虫に丁寧な言葉使いをしなければいけないのだ。 たしか奥に殺虫剤があった筈だ、よ…

不穏な動き

今朝、店を開けようとするとだんご虫が匂いを嗅ぐように 蠢いていた。 どうしたんだろうと周りを見回せば、ナメクジもいる。 今日は賑やかだなあ、なんて思いながらシャッターを上げる。 途端に蜘蛛がスーと降りて来た。 ドアにはカメ虫のでかいやつが張り付…

まさか私が犯人になるなんて。

朝、いつものように店を開けて色んな物を店先に出して 足拭きマットを階段で叩いてゴミを落としてから敷く。 そのマットを階段に叩き付けた途端、思いだした。 「さなぎがいたんだ」 恐る恐る覗くと、潰れていました。 あー、まさか私が殺虫犯になるなんて信…