独り住まい 5
風も爽やかな四月になった。
桜は終ったけど
若葉が美しい。
新鮮な空気を入れようと窓を開け、
振り返ると、すぐ後ろにおじさんが立っていた。
どこかで見かけたような、親近感の持てる顔だ。
そのおじさんが言った。
「どうだ、天気も良いし、ワシと出かけてみんかね」
「おじさんと?」
「そう、おじさんとだよ。良い所があるんだ。」
「どこ?」
「山だ、色んな花が咲き乱れ、それはもうこの世の物とは
思えないくらいだ」
この世の物でない、その言葉にゾッとしたが
ちょっと興味も湧いた。
「皆は、モッコリ山と呼ぶんだが、そこはニルバーナみたいな所だ」
モッコリ山で思いだした。
この人、大滝秀治そっくりだ。
俺、大滝さん好きなんだよなー
「いいですよ、一緒に行きましょう、モッコリ山」
ニルバーナが何なのかが気になったが、まあいいか。