もう一つのタラチネーゼ
一人暮しを始めて一月が過ぎた。
一人身の自由にも慣れて来た。
近くにはコンビニもあるし、さほど不便は感じない。
陽がかげって来た。
ベランダでは、布団が五月の風に揺れている。
毛布を取り入れると、ほんわりと温もり、
日なたの匂いがする。
なぜだろう、ふと母を思いだす。
そう言えば、今日は母の日だった。
実家に電話を入れてみようか。
なんて声を掛けようか「元気?」かな。
ケイタイの向こうで母の声がした。
結局、出た言葉は「あっ、オレ」で、
帰って来た言葉は「オレオレって、あんたオレオレ詐欺ね!
あんたにやるお金なんてうちには無いからね!」
確かにお金送って欲しかったんだけど・・・